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『イシューからはじめよ』安宅和人さんに、コロナ禍のヤフー本社で取材した話

2020年10月30日
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「みんなの介護」編集部のキムラです。各分野の専門家が介護のコツを解説する「介護の教科書」や各界の著名人の特別インタビュー企画「賢人論。」などの連載担当を持ちながら、最近では新サービスの開発ディレクションなどにも携わっています。

手掛けた記事はどれも思い入れがありますが、今回はその中でも印象的だった安宅和人さんへの取材エピソードを中心に、編集者として活動や私自身が心がけていることなどについてお話します。

インターン先からの内定を辞退して入社

私は大学院でドイツの社会福祉政策について研究していて、研究者の道を考えたこともありました。ですが、情報発信者として活動していったほうが自分の力で困っている方々の助けになれるのではと考え、在学中から編集・ライターとしてある企業でインターンをしていました。

就職活動のときには、インターン先からも内定をいただいていました。しかし、「福祉✕メディア」というキーワードで探していたところ、「みんなの介護」を運営しているクーリエで編集者を募集していることを見つけ、応募しました。

「みんなの介護」は業界No.1のポジションにあり、自分の編集力をより高めていける場ではないかと魅力的に映ったためです。

また、やる気さえあれば経験を問わずさまざまなことにチャレンジできる社風であることが面接のときからわかり、他社と天秤にかけた結果、クーリエへの入社を決めました。

大学院のときに参加した「日独専門家会議」の様子。

入社2ヵ月で任せてもらえた「賢人論。」

入社して2ヵ月が経った頃。「みんなの介護」の編集業務にも慣れてきて、「より難易度の高いことにも取り組みたい」と声を上げ続けていた結果、著名人インタビュー企画である「賢人論。」を担当させていただくことになりました。

羽生善治さんや石黒浩さん、養老孟司さん、佐渡島庸平さんなどにもご登場いただいた、人気連載企画です。各界を代表する論客に出演交渉し、その声を紡ぎ合わせていくことになるとは、胸が高まると同時にプレッシャーに感じる部分もありました。

もちろん最初は前任の編集者と並走する形で、依頼の仕方から記事作成、取材後のアフターフォローまで一通りのことを実践していきました。

また、クーリエの編集部の特徴の一つに、記事制作のタスクをすべて可視化し、いつ何をすれば良いのかわかるという仕組みがあります。この仕組みのお陰もあって、かなりスムーズに担当を引き継いで独り立ちして回していけるようになりました。

とはいえ、取材依頼をかける著名人の方々は多忙を極めていますから、いかに引き受けてもらうかは、依頼文の一言一句から連絡のスピード感まで、先方の視点に立った対応が求められます。今も総合力を高めていけるよう、切磋琢磨しながら取り組んでいます。

担当して編集した記事はどれも思い入れ深いものですが、特に印象に残っているのがコロナ禍で行ったヤフーCSOで慶應義塾大学環境情報学部教授の安宅和人さんへの取材でした。

コロナ禍の逆境をチャンスに変える取材

30万部突破のベストセラー『イシューからはじめよ』の著者でもある安宅和人さんは、新著である『シン・ニホン』を上梓されていました。

取材の快諾自体はいただいていたものの、折しも新型コロナ流行でビジネス慣行が大きく変化しているタイミングでした。企画自体が流れるかもしれないという状態。

ですが、コロナの逆境は「ウィズコロナ」時代を生き抜く知恵を語っていただく機会であるとも捉え、どうにか取材を実現できるよう調整を重ねていきました。

オンライン取材も検討しましたが、ヤフー本社にほとんど人がいない状況であったため、最終的にはほぼ無人のオフィスで取材させていただくことになりました。

時間と場所をご用意していただいたご恩に報いることができるよう、取材の準備も入念に行いました。著書の他にも安宅さんが出ていたインタビュー記事は読み込み、話をされている動画も見て、ご本人の空気感や言葉のチョイスをつかんでいきました

当日は、最初の読者たる編集者(私)に向けて、大変誠実かつ生き生きと語っていただきました。

安宅さんにご登場いただいた記事より。

「これまで受けた取材記事の中でも秀逸」との言葉に感激

そして世に出た記事には大きな反響が集まり、議論を呼ぶことになりました。そのことも編集者冥利に尽きるものですが、一番嬉しかったのは安宅さんご本人から「これまで受けた取材記事の中でも秀逸」とのお言葉をいただけたことでした

SNSでも「素敵な取材と丁寧な記事をありがとうございました!」とわざわざご投稿いただき、感激しました。私もこの貴重な経験談を話したくて友人に記事をシェアしたところ、「コロナ禍の今、安宅さんの記事作ったの!?すごいね!」と驚かれました(笑)。

編集者として大切にしている2つのこと

まだまだ社会人歴の浅い私ですが、編集者として大切にしていることは2つあって、まず「時代に求められる情報」をきちんと出していけるかどうか。そのために日頃から情報感度を上げて、読者の潜在ニーズを発掘できるようにしています。

例えば、身近に介護経験のある人がいたら、日頃どういうことが気になっているかなどを深堀りして聞くようにしています。

もう1つは、「語り継がれるものをつくる」ことです。Webメディアのコンテンツは基本的にネット上に残り続け、何年先でも読もうと思えばすぐに読めます。色褪せないコンテンツづくりのために、長年愛され続けたきた歴史書や哲学書なども読み、読者へアプローチの仕方を吸収するようにしています。

10年後、20年後もその人の思想や発言が残り続けることを願い、「賢人論。」に取り組んでいます。

今のメディア編集者は「編集だけ」では生き残れない

社会に求められる情報をどう届けていくか、そのために必要なことはどんなことでも取り組んでいきたいと思っています。取材や編集だけではなく、例えばよりメディアの集客力を高めるために欠かせないSEO関係のことであったり、メディアの機能改善のための開発部門との連携であったり。編集者に求められる役割、能力は多岐にわたることでしょう。

逆に言えば、今の時代、「編集しかできない」編集者は生き残れないと思っています。

クーリエには従来の編集業の枠にとらわれない仕事に取り組むことのできる土壌があります。そして、自分自身の強みを広げ、伸ばしていくことができます。

失敗を恐れずさまざまなことに挑戦していきたいですし、そういうメンバーと一緒に働いていきたいと思います。どれだけ努力しても失敗は避けれません。仮に失敗したとしても、そこから得たことを次につなげていけるハングリーさを失わずに突き進んでいきます。

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